賃上げ加点制度とは?入札で3%賃上げをアピールする方法
国交省の総合評価落札方式における賃上げ加点制度を解説。3%・5%の賃上げ表明が評価点に与える影響、表明書の書き方、未達時のペナルティまで建設業者が知るべき全情報を網羅する。
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賃上げ加点制度とは?入札で3%賃上げをアピールする方法
公共工事の入札競争において、賃上げへの取り組みが評価点に直結する時代が来ている。2022年4月から本格導入された「総合評価落札方式における賃上げ加点制度」は、従業員の賃金を一定率以上引き上げると表明した企業に対し、入札評価点の5%以上を加算する国の施策だ。
本記事では、制度の仕組みから申告手順、未達時のリスクまで、建設業者が実務で必要とする情報を体系的に解説する。
1. 賃上げ加点制度とは?国交省の施策概要
賃上げ加点制度とは、国が発注する公共調達において、従業員の賃金を一定率以上引き上げると表明した企業に対し、総合評価落札方式の評価点に加点する仕組みである。
制度の背景と目的
この制度は、2021年11月の「新しい資本主義実現会議」緊急提言をきっかけに生まれた。政府は「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の一環として、公的部門における分配機能の強化を掲げた。
その具体策として、2021年12月17日に財務大臣から各省庁の長あてに通知が発出された。国土交通省はこれを受け、2022年4月1日以降に締結される契約から賃上げ加点を全面適用した。
制度の法的根拠と運用主体
- 財務大臣通知(財計第4803号、令和3年12月17日、一部改正:令和6年1月31日)
- 国土交通省が発注する工事・コンサルタント業務等の総合評価案件に適用
- 実績確認はJICE(一般財団法人日本建設情報総合センター)が運営する特設サイトを通じて実施
対象となる調達範囲
総合評価落札方式を採用するすべての公共調達が対象となる。国土交通省の直轄工事はもちろん、農林水産省・防衛省など他省庁の調達にも同様の制度が導入されている。地方自治体の調達は各自治体の判断によるが、国に準じた運用を行う団体が増加している。
2. 3%・5%の賃上げ表明と評価点への影響
3%または5%の賃上げ表明が総合評価の点数に与える影響を正確に理解することが、入札戦略の核心である。
賃上げ率の基準と区分
企業規模によって求められる賃上げ率の基準は異なる。
| 企業区分 | 資本金基準 | 加点を受けるための最低賃上げ率 | |----------|------------|-------------------------------| | 大企業 | 資本金1億円超 | 前年度比3%以上 | | 中小企業等 | 資本金1億円以下 | 前年度比1.5%以上 |
大企業が3%以上、中小企業等が1.5%以上の賃上げを表明することで加点の対象となる。なお、中小企業等に該当するかどうかの確認には、法人税確定申告書別表一の写しの提出が必要となる場合がある。
評価点への影響
加点幅は「評価点全体の5%以上」と定められている。具体的な点数は案件ごとに異なるが、以下のような設計が一般的だ。
- 評価点全体が100点満点の場合:5点以上の加点
- 評価点全体が120点満点の場合:6点以上の加点
- 技術点と価格点の合計に対して5%以上が加算される設計
入札において、技術点の差が数点単位で勝敗を分けることは珍しくない。5%以上の加点は、競合他社との差別化において非常に大きな意味を持つ。
3%表明と5%表明の違い
財務省通知では賃上げ率に応じた加点区分が設けられている場合がある。国交省の運用では大企業3%以上・中小企業1.5%以上が加点の条件となっているが、発注機関によっては5%以上の賃上げ表明に対してさらに上乗せの加点を行う設計を取ることもある。
入札参加前に必ず当該案件の評価基準書を確認し、加点の配点設計を把握することが重要だ。
賃上げ表明の対象となる賃金
賃上げの判定に使う「賃金」の範囲は、基本給だけでなく各種手当を含めた総額で計算することが基本だ。ただし、国交省の運用では「継続雇用者の給与総額」や「基本給のみ」での判定を認める場合もある。どの賃金指標を使うかは、発注機関ごとの評価基準書を参照すること。
3. 申告方法と必要書類
賃上げ加点を受けるための手続きは、入札時の「表明」と落札後の「実績確認」の2段階に分かれる。
ステップ1:入札時の表明書提出
入札参加時に「従業員への賃金引上げ計画の表明書」を提出することで加点の対象となる。この書類は任意提出であり、提出しない場合は加点を受けられないが、提出したことによるペナルティは生じない(ただし後述の未達時ペナルティは適用される)。
提出書類(入札時)
- 従業員への賃金引上げ計画の表明書(大企業用・中小企業等用で様式が異なる)
- 中小企業等に該当する場合は法人税確定申告書別表一の写し(資本金確認のため)
表明書の様式は各発注機関のウェブサイトまたは入札公告資料に掲載されている。国交省直轄工事の場合は国交省ウェブサイト、農水省案件の場合は農水省のサイトを参照する。
ステップ2:落札後の実績確認
落札・契約後、表明した賃上げが実際に達成されたかどうかの確認が行われる。確認のタイミングは、表明した「事業年度」または「暦年」の終了後だ。
国交省直轄工事の場合
国交省が独自に採用している実績確認方法では、書類提出期限が「事業年度または暦年終了後3か月以内」に統一されている。JICE(日本建設情報総合センター)が運営する賃上げ実績確認調査特設サイト(https://survey.jice.or.jp/)を通じて手続きを行う。
提出書類(実績確認時)
- 法人事業概況説明書(決算書類の一部)または給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 前年度との比較資料(給与総額の伸び率を確認できるもの)
- 賃上げ実績確認書(所定様式)
注意点:事業年度か暦年かの選択
賃上げの計算期間は「事業年度」と「暦年(1月〜12月)」のどちらかを選択できる。4月決算の企業が入札時に「暦年」を選択した場合、1月〜12月の給与総額で判定される。自社に有利な計算期間を選択し、表明書に明記することが重要だ。
4. 入札支援AIで賃上げ加点の取りこぼしをゼロに
賃上げ加点制度は「知っているかどうか」で入札結果が大きく変わる施策だ。しかし、案件ごとに評価基準書の内容が異なり、表明書の様式や提出タイミングを一つひとつ確認するのは手間がかかる。
入札支援AIは、公共工事の入札に関する情報収集・書類作成・戦略立案をトータルサポートするツールだ。賃上げ加点の申告手続きもAIがガイドするため、書類の取りこぼしや期限管理のミスを防げる。
- 賃上げ表明書の作成補助
- 案件ごとの加点配分設計の確認
- 実績確認書類の提出期限アラート
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5. 賃上げ表明の注意点と未達時のペナルティ
賃上げ加点は競争力を高める有力な手段だが、達成できなかった場合のリスクを正確に理解した上で表明することが不可欠だ。
未達時のペナルティ:最大1年間の減点措置
賃上げ表明を行って落札した企業が、実際には目標率の賃上げを達成できなかった場合、または確認書類を期限内に提出しなかった場合、以下のペナルティが科される。
減点措置の内容
- 財務省から減点措置対象者として通知された日から1年間、国が総合評価落札方式で発注するすべての調達において減点が適用される
- 減点幅は「加点措置よりも大きい点数」とされており、加点時の恩恵を上回るマイナス影響がある
- 一省庁の案件で未達となった場合でも、他省庁の案件を含めたすべての国の総合評価案件に減点が波及する
この点が制度の最大のリスクポイントだ。建設業者は国交省案件だけでなく農水省・防衛省・文科省など複数省庁の案件に入札することも多い。一度の未達が全省庁への影響を及ぼすことを忘れてはならない。
表明時に確認すべき6つのポイント
1. 実現可能な賃上げ率を表明する
前年度実績を踏まえ、確実に達成できる数字を表明すること。過大な表明は得点を稼げても、未達リスクが高まる。
2. 人件費の増加が資金繰りに影響しないか確認する
3%の賃上げは全従業員の給与総額に対して適用される。売上規模や利益率に対して賃上げコストが適切かどうかを財務担当者と事前に確認する。
3. 計算方法を統一する
「給与総額」「継続雇用者の給与」「基本給のみ」など、発注機関ごとに採用する指標が異なる場合がある。表明書に記載した計算方法と実績確認時の計算方法が一致するよう、社内で統一ルールを定める。
4. 合併・組織変更に注意する
事業年度中に合併や会社分割があった場合、前年度との単純比較ができなくなる。発注機関に事前相談することを推奨する。
5. 書類提出期限を必ずカレンダー管理する
実績確認書類の提出期限を逃すと、賃上げを達成していても未達扱いとなる可能性がある。期限は事業年度または暦年終了後3か月以内(国交省の場合)だ。複数案件を抱えている場合は、プロジェクト管理ツール等で期限を一元管理する。
6. 下請企業への波及も検討する
国の施策として、元請企業の賃上げ分を下請企業にも適切に行き渡らせることが期待されている。公契約条例の適用がある自治体案件では、下請けへの賃上げ浸透が評価されることもある。
よくある失敗パターン
- 当初は3%達成の見込みがあったが、年度末の残業手当削減等で給与総額が増加しなかった
- 確認書類の提出をうっかり忘れ、期限超過で未達扱いになった
- 「継続雇用者のみ」で計算する必要があったのに全従業員の数字を使い、計算ミスが発生した
6. FAQ(よくある質問)
Q1. 個人事業主や一人親方でも賃上げ加点を申告できるか?
賃上げ加点の対象は「従業員への賃金引上げ」であるため、従業員がいない個人事業主や一人親方は原則として加点の申告ができない。従業員を雇用していない場合は、この加点措置を活用することは難しい。
Q2. 賃上げ表明書の提出は義務か?
表明書の提出は任意だ。提出しなくても入札参加資格は失われない。ただし、提出しなければ加点は得られない。提出した場合は達成義務が生じるため、自社の賃上げ計画を慎重に検討した上で判断すること。
Q3. 地方自治体の入札でも賃上げ加点は使えるか?
地方自治体の公共調達への適用は各自治体の裁量に委ねられている。国が示した制度設計に準じた運用を導入する自治体が増えているが、制度の有無・要件・加点幅は自治体ごとに異なる。参加を検討する入札案件の公告文や評価基準書を個別に確認することが必要だ。
Q4. 賃上げ率の計算は毎月の給与で計算するのか、年間合計で計算するのか?
原則として年間(事業年度または暦年)の給与総額を前年度と比較して計算する。月次の変動は関係なく、年間トータルの給与支払額が前年比で目標率以上増加していれば達成となる。賞与や各種手当も基本的に含まれる(発注機関の定義に従うこと)。
Q5. 複数の省庁案件を同時に受注している場合、実績確認はどうなるか?
実績確認は企業単位で行われる。複数省庁の案件で賃上げ表明をしている場合でも、1つの事業年度・暦年の給与実績で一括して判定される。ただし、省庁ごとに確認手続きや提出先が異なるため、それぞれの手続きを個別に進める必要がある。国交省案件はJICEのサイト、農水省案件は農水省の窓口というように管理する。
7. まとめ
賃上げ加点制度は、国が公共調達を通じて民間企業の賃上げを促進するための政策ツールだ。建設業者にとっては、適切に活用すれば総合評価で5%以上の加点を獲得できる有力な手段となる。
本記事の要点
- 制度の概要:2022年4月から全面導入。大企業3%以上・中小企業1.5%以上の賃上げ表明で加点
- 加点幅:評価点全体の5%以上。数点差で勝敗が決まる総合評価では競争力を大きく左右する
- 申告手順:入札時に表明書を提出し、事業年度・暦年終了後3か月以内に実績確認書類を提出
- ペナルティ:未達の場合、1年間にわたって全省庁の総合評価案件で加点以上の減点が適用される
- 注意点:確実に達成できる率を表明すること、書類提出期限を厳守すること
賃上げ加点は「知っているだけでは不十分」で、確実な実行と適切な書類管理が伴って初めて競争優位につながる。制度を正しく理解し、自社の賃上げ計画と連動させた入札戦略を構築してほしい。
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メタ情報
- 記事番号:078
- タイトル:賃上げ加点制度とは?入札で3%賃上げをアピールする方法
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- 公開日:2026-03-17
- 対象KW:賃上げ 入札 加点 / 賃上げ 総合評価
- ペルソナ:P2(建設業の入札担当者・中堅管理職)
- カテゴリ:入札制度
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