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総合評価落札方式の地域別実施率ランキング|データで見る全国の傾向

総合評価落札方式の都道府県別・地域ブロック別の実施率と傾向を解説。国土交通省・全国建設業協会のデータをもとに、地域格差の実態と入札参加企業が押さえるべき実践ポイントをまとめる。

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総合評価落札方式の地域別実施率ランキング|データで見る全国の傾向

「他の都道府県では総合評価がどれくらい使われているのか」「地元の市区町村はまだ導入していないのか」——公共工事の入札に携わる担当者からそうした声は多い。

本記事では、国土交通省の調査データや各地方整備局の公開情報をもとに、総合評価落札方式の地域別実施率と全国傾向を整理する。都道府県・政令指定都市・市区町村という発注者の階層ごとのデータと、地域ブロック別の特性を把握することで、自社が参加する入札への備えを深めてほしい。


総合評価落札方式とは何か

総合評価落札方式とは、入札における落札者の決定に際して「価格」だけでなく「技術力・施工実績・地域貢献」などの価格以外の要素を加味して総合的に評価し、最も優れた提案をした業者を選定する入札方式である。

最低価格入札主義が招く品質低下や事故を防ぎ、公共工事の品質確保を目的として平成17年に制定された公共工事品質確保促進法(品確法)を根拠としている。国土交通省直轄工事ではほぼ全件に適用されており、地方公共団体への普及も継続的に推進されている状況だ。


全国データで見る導入状況の全体像

発注者階層別の導入率

国土交通省が毎年実施する「入札契約の適正化の取組状況に関する調査」の最新結果(令和6年7月1日時点)では、発注者の種類ごとに総合評価落札方式の導入状況が明確に分かれている。

| 発注者の種別 | 総合評価落札方式の導入状況 | |---|---| | 国(省庁等・特殊法人等) | 全機関で導入済み | | 都道府県 | 全47都道府県で導入済み(100%) | | 政令指定都市 | 全20市で導入済み(100%) | | 市区町村 | 63.8%(前回調査63.0%からほぼ横ばい) |

都道府県・政令指定都市レベルでは導入完了している一方、市区町村の導入率は6割台にとどまっており、約36%の市区町村がいまだ未導入という状況だ。

実施「件数比率」と導入「団体比率」の違いに注意

「導入済み」と「積極的に活用している」は別の話である。国土交通省の別の調査データでは、全工事件数に占める総合評価落札方式適用件数の割合は次のとおりとなっている。

| 発注者の種別 | 全工事に占める適用件数比率(参考値) | |---|---| | 都道府県 | 約19% | | 政令指定都市 | 約9% | | 市区町村 | 約2% |

都道府県は全て導入済みであっても、実際に総合評価を適用している工事は全体の2割程度にとどまる。大規模・難易度の高い工事に絞って適用しているためで、日常的な維持補修工事の多くは最低制限価格方式などが使われている。


地域ブロック別の傾向と特色

国土交通省の地方整備局は8ブロック(北海道開発局含む)に分かれており、各ブロックで実施方針や評価項目に独自の工夫がある。地域の課題に対応した評価制度の設計が進んでいる点は、入札参加企業にとって押さえておくべきポイントだ。

北海道・東北ブロック

北海道は総工事面積が全国最大であり、北海道開発局が道内直轄工事のほぼ全件に総合評価を適用している。積雪・寒冷地対応の施工技術、冬期工事の安全対策が評価項目として重視される特性がある。

宮城県を中心とする東北ブロックでは、東日本大震災以降の復興需要を経て「災害時の地域貢献実績」が評価項目として定着した。宮城県は建設工事・建設関連業務ともに総合評価落札方式の実施要領を整備し、簡易型・標準型・高度型の3段階体制を確立している。

関東ブロック

関東地方整備局は9都県(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・長野)を管轄し、市区町村への普及活動に特に力を入れている。令和7年度版ガイドラインでは、施工能力評価型(Ⅱ型)が件数比で約79%を占めており、大多数の工事が簡易な技術審査で処理されている実態がある。

注目すべきは東京都の方向転換だ。従来は建設工事・業務全般に総合評価を「原則適用」としていたが、2024年度から原則適用を廃止し、価格競争方式を選択肢に加える制度改正を実施した。背景には次の課題がある。

  • 落札者の固定化: 過去実績の評価点が大きく、新規参入企業が受注しにくい構造
  • 事務負担の増大: 技術提案書の作成・評価に受発注者双方が多大な工数をかけていた
  • 業界からの要望: 中小建設業者を中心に見直しを求める声が高まっていた

この東京都の動向は、全国的な「総合評価の形骸化・負担増」という課題を象徴しており、他の地方公共団体でも同様の議論が生じている。

近畿・中部ブロック

大阪府は令和6年度の取組方針で、建設工事・建設コンサルタント業務を対象に総合評価を実施している。同年度から一部書式名称を「ガイドライン」から「取組方針」に変更したが、評価基準・評価項目の実質的な内容に変更はない。大阪府では工事の規模・難易度に応じた3タイプ(施工計画重視型・技術力重視型・地域貢献重視型)の使い分けが整理されている。

兵庫県では「施工体制確認型」「技術提案型」「企業チャレンジ型」という独自の分類を設けており、若手技術者の活用や女性技術者の配置を加点評価するなど、担い手確保の観点を取り込んでいる。

九州ブロック

九州地方整備局は毎年度「総合評価落札方式の主な変更点」を公表しており、最新動向が把握しやすいブロックの一つだ。令和6年度の変更点としてはカーボンニュートラルへの取り組み実績評価の継続・強化と、BIM/CIM活用工事における加点評価の拡充が挙げられる。

福岡市は政令指定都市として独自のガイドラインを整備しており、工事成績・同種工事経験・社会貢献活動を評価対象としている。北九州市も2025年版ガイドラインを更新済みで、九州ブロック内の政令市は制度整備が整った状態にある。


市区町村の導入状況:3割超がまだ未導入の理由

市区町村の導入率が63.8%にとどまる背景には、構造的な課題がある。

人員不足の問題

国土交通省の調査によると、土木部門職員数が10人未満の「村」が約9割、「町」が約5割にのぼる。総合評価落札方式の実施には、評価委員会の設置・技術的審査が必要であり、少人数の担当体制では実施そのものが困難になりやすい。

学識経験者の確保が困難

地方自治法の規定により、地方公共団体が総合評価落札方式を実施する際は「あらかじめ2人以上の学識経験者の意見を聴取」しなければならない。人口規模が小さい町村では、適切な学識経験者を地域内で確保することが難しく、導入の壁になっている。

事務コスト・負担が見合わない

工事規模が小さい市区町村では、総合評価の評価コストが相対的に大きくなる。工事金額が数百万円程度の案件に詳細な技術提案書を求めても、費用対効果が低いという判断がはたらくことも多い。国土交通省ではこの課題への対処として「簡易型」の普及を推進しているが、浸透には時間がかかっている状況だ。


地域別に見る評価項目の特色比較

都道府県・地方整備局ごとに、評価項目の重点が異なる。入札参加企業は自社の強みと発注者の評価傾向を照合し、どの項目で加点を獲得できるかを把握しておくことが重要だ。

| 地域・発注機関 | 特徴的な評価項目 | 背景 | |---|---|---| | 北海道(開発局・道) | 冬期施工技術・防寒対策 | 積雪寒冷地特有の施工要求 | | 東北(宮城県等) | 災害時地域貢献実績 | 東日本大震災後の復興需要対応 | | 関東(地方整備局) | 施工能力評価(Ⅱ型主体) | 広域・多件数処理に対応した簡易型化 | | 東京都(建設局) | 2024年度から価格競争も選択肢 | 事務負担軽減・落札固定化防止 | | 近畿(大阪府) | 3タイプ使い分け・環境配慮 | 工事種別に応じた評価設計 | | 兵庫県 | 若手・女性技術者の活用 | 担い手確保・多様性の推進 | | 九州(地方整備局) | BIM/CIM活用・カーボンニュートラル | DX推進・脱炭素施策との連動 | | 市区町村(全般) | 地元企業優先・地域密着度 | 地域経済循環・緊急対応力の評価 |


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「実施率ランキング」を読み解く際の注意点

「総合評価の実施率が高い都道府県が良い」という単純な話ではない。実施率の数字を解釈する上で押さえておくべき視点を整理する。

注意点1:件数比率とは別に「適用対象閾値」がある

総合評価落札方式は一般に「予定価格○○円以上の工事に原則適用」という形で対象範囲が決まっている。関東地方整備局では予定価格130万円超の工事に原則適用しており、これが「件数ベースで97%超」という高い適用率につながっている。一方、都道府県の「19%」は、より高い閾値を設定していることが一因だ。

注意点2:簡易型か技術提案型かで難易度が大きく異なる

同じ「総合評価」でも、業者の技術提案書を詳しく審査する「技術提案評価型(S型)」と、企業の施工実績・資格のみで評価する「施工能力評価型(Ⅱ型)」では、入札参加側の準備負担が全く異なる。国土交通省直轄工事では件数ベースでⅡ型が約79%を占めており、大半の案件は簡易な審査で処理されている。

注意点3:地元貢献評価は地方ほど重視される傾向

市区町村が総合評価を実施する場合、「地域密着度」「地元雇用比率」「過去の地域貢献実績」を評価する割合が高い。地方の案件ほど地域外企業にとっての参入ハードルが上がる傾向があるため、首都圏の中堅企業が地方案件に参入する際は評価項目を事前に確認することが不可欠だ。


企業が実践で活かすための対応ポイント

対応ポイント1:ターゲット地域の発注傾向を事前に把握する

東京都入札ガイド国交省直轄工事入札で解説しているように、発注機関ごとに評価項目・加点基準が異なる。入札参加前に当該機関のガイドラインを必ず確認し、評価項目ごとの自社のスコアを見積もっておくことが重要だ。

対応ポイント2:政令指定都市の案件は手順を特に確認する

政令指定都市入札において詳述しているが、政令指定都市は独自のガイドラインを持ち、都道府県や国と評価体系が異なる場合が多い。横浜市・大阪市・名古屋市・福岡市それぞれで評価基準のバリエーションがあるため、初めて参加する政令市では書類作成前にガイドラインを通読することを推奨する。

対応ポイント3:地域貢献実績の継続的な積み上げ

災害協定の締結、地域の清掃活動参加、地元学校・自治会への協力など、地域貢献活動は「やってから記録する」では遅い。評価時に書面で証明できる形で平時から実績を積み上げ、入札時に提出できる状態を整えておくことが差別化につながる。

対応ポイント4:BIM/CIM・DX対応は今後の加点要素として重要

国土交通省は令和5年度からBIM/CIMの原則適用を拡大しており、九州地方整備局をはじめ複数のブロックでBIM/CIM活用実績が加点評価される仕組みが整っている。ICT施工、3D測量、電子納品の実績を蓄積することは、中長期的な評価スコア向上に直結する。


よくある疑問

Q1. 市区町村に総合評価がない場合、どう対応すればよいか?

未導入の市区町村では最低制限価格方式・低入札価格調査制度が主体となる。価格競争力の確保と適正利益の両立が課題になるが、導入件数の少ない地区では大手との技術評価による差異化が起きにくく、積算精度と施工コスト管理が勝負の分かれ目になることが多い。

Q2. 都道府県から市区町村へ普及が進みにくい理由は何か?

最大の障壁は「担当者の不足」と「学識経験者の確保困難」だ。関東地方整備局は管内市区町村への普及支援として、ひな形書類の提供・研修会の実施・相談対応窓口の設置を行っているが、小規模自治体では実施に踏み切れないケースが依然として多い。

Q3. 評価方式が変わると参加条件はどう変わるか?

評価方式が「施工能力評価型(Ⅱ型)」から「技術提案評価型(S型)」に変わると、技術提案書の作成が必要になり、専門技術者のアサイン・文書作成工数が増加する。逆に簡易型が採用される案件が増えれば、参加しやすくなる代わりに価格競争が激化する傾向がある。

Q4. 総合評価落札方式の導入が少ない地域は受注しやすいか?

必ずしもそうではない。導入が少ない地域は価格競争が主体となり、入札参加者が集中しやすい。結果として落札率が低下し、適正利益が確保しにくくなるケースもある。総合評価の適用範囲が広い地域は技術力で差別化できるため、技術力に自信のある企業にとっては有利に働く側面もある。


まとめ

総合評価落札方式の地域別実施率について、以下のポイントを押さえておきたい。

  • 都道府県・政令市は全団体が導入済みだが、工事件数ベースの適用率は都道府県で約19%、政令市で約9%
  • **市区町村の導入率は63.8%**で、約36%の団体がいまだ未導入。背景には人員不足・学識経験者確保難・事務コスト問題がある
  • 地域ブロックごとに評価項目の重点が異なる。 北海道は寒冷地技術・東北は地域貢献・東京都は2024年度から価格競争も選択肢として追加・九州はBIM/CIM・カーボンニュートラルが特徴的だ
  • 「総合評価あり」でも簡易型(施工能力評価型Ⅱ型)が件数ベースの約79%を占めるため、技術提案書の作成が必要な案件は限定的だ
  • 地元貢献評価は地方ほど重視される傾向があり、地域外からの参入時はガイドラインの評価項目確認が不可欠だ

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