経営事項審査(経審)のポイント完全ガイド|点数を上げる7つの方法
経営事項審査(経審)のP点の仕組みと点数を上げる7つの具体的方法。完成工事高、技術職員数、社会性等の改善策を経営者向けに解説。
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経営事項審査(経審)のポイント完全ガイド|点数を上げる7つの方法
公共工事を受注するには、経営事項審査(経審)の点数が直接的な武器になる。 点数が高ければ入札参加できる案件の規模が広がり、競合との差別化にもなる。 しかし「何をすれば点数が上がるのか」「どこから手をつければ効果が大きいのか」を 体系的に理解している経営者は、実際には多くない。
本記事では、P点の計算構造を解説したうえで、 完成工事高・技術職員数・社会性等の各評価軸ごとの改善策を整理する。 さらに経営判断として優先度をつけやすい「7つの具体的方法」を提示する。
経営事項審査(経審)とは?P点の仕組み
経営事項審査(経審)とは、公共工事を受注しようとする建設業者が国土交通省または都道府県に申請する審査制度であり、経営規模・経営状況・技術力・社会性の4つの観点から客観的に評価されるものである。
P点(総合評定値)の計算式
経審の結果として算出される総合評定値は「P点」と呼ばれる。 P点は以下の計算式で算出される。
P = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.20Y + 0.25Z + 0.15W
| 記号 | 評価項目 | ウエイト | 内容 | |---|---|---|---| | X1 | 完成工事高評点 | 25% | 工事種類別の年間平均完成工事高 | | X2 | 自己資本額・平均利益額評点 | 15% | 純資産と営業利益の規模 | | Y | 経営状況評点 | 20% | 財務指標8項目に基づく財務健全性 | | Z | 技術力評点 | 25% | 技術職員数と元請完成工事高 | | W | 社会性等評点 | 15% | 労働福祉・法令遵守・保険加入等 |
ウエイトの大きい項目はX1(25%)とZ(25%)であり、 この2項目の合計でP点の50%を占める。 改善投資の費用対効果を考えるうえで、まずこの2項目への注力が基本戦略となる。
P点の平均と目安
経審を受審した建設業者のP点平均は700点前後とされている。 800点を超えると業界内では「優秀」とみなされ、 格付けランクAへの昇格が射程に入ってくる。
点数の分布は概ね以下のとおりである。
| 点数帯 | 位置づけ | 受注可能工事規模(目安) | |---|---|---| | 900点以上 | 大手・上位 | 数十億円規模の大型案件 | | 800〜900点 | 中堅上位 | 数億〜数十億円 | | 700〜800点 | 平均的 | 1〜3億円程度 | | 600〜700点 | 平均以下 | 数千万〜1億円 | | 600点未満 | 要改善 | 小規模案件中心 |
完成工事高(X1)を効率的に伸ばす方法
X1評点は、工事種類別の年間平均完成工事高を数値化したものであり、P点の25%を占める最大ウエイト項目のひとつであるため、売上規模の向上と申請戦略の両面から改善を図ることが有効である。
2年平均・3年平均の選択戦略
完成工事高の評点算定には、直近2年平均と3年平均のいずれかを選択できる制度がある。 この制度は「激変緩和措置」として導入されており、 売上が急減した年度の影響を平準化する目的で設けられている。
選択の基本ルールは「平均値が高くなる方を選ぶ」ことだ。 昨年大型案件が集中したなら2年平均、 一昨年に大型工事があったなら3年平均の方が有利になる場合がある。 毎年シミュレーションして有利な方を選ぶことが、コストゼロで実行できる改善策である。
業種を集約して評点を最大化する
複数の業種で工事を施工している場合、 工事種別の配分を意識的に設計することで評点を高められる。
たとえば「土木一式」「舗装」「とび・土工」にそれぞれ工事を分散させると、 各業種の完成工事高が小さくなってX1評点が低くなりやすい。 主要業種に工事を集中させる施工計画は、経審点の観点からも有効である。
経営事業計画との連動
X1は会社の実際の売上規模に連動する。 短期で劇的に改善するのは難しいが、 公共工事受注比率を高める営業戦略や、 下請から元請への転換計画は、X1の中長期的な改善に直結する。
公共工事の受注を増やす戦略については、 別記事で詳しく解説しているため、あわせて参照されたい。
技術職員数(Z)・社会性等(W)の改善策
Z評点とW評点はそれぞれ25%・15%のウエイトを持ち、資格取得・保険加入・制度活用という具体的なアクションによって比較的短期間で改善できる項目である。
Z評点(技術力)の構成と改善策
Z評点は「技術職員数」と「元請完成工事高」の2要素で算出される。 技術職員の評価は、保有資格によって点数が異なる。
| 資格区分 | 点数(1人あたり) | |---|---| | 1級技術者(監理技術者講習修了) | 6点 | | 1級技術者(監理技術者講習なし) | 5点 | | 2級技術者 | 2点 | | その他技術者 | 1点 |
この構造から導かれる具体的アクションは以下のとおりだ。
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2級保有者の1級昇格支援:2点から5〜6点へと2〜3倍の加点になる。 資格取得費用・受験手数料・学習時間の支援制度を整備することが経営投資として有効だ。
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監理技術者講習の受講奨励:1級資格者が講習を修了すると5点→6点に上がる。 1人あたり1点のアップだが、対象者が多ければ積み上げは大きくなる。
-
Z評点は業種別に算出されるため、 受注したい業種の技術者育成に的を絞ることが重要である。
工事成績評定点も技術力評価の重要指標であり、 元請としての施工品質管理と並行して改善を進めることが望ましい。
W評点(社会性等)の構成
W評点は以下の8つの評価項目(W1〜W8)から構成される。
| 項目 | 内容 | 主な加点要件 | |---|---|---| | W1 | 担い手育成・確保の取組 | 建設業退職金共済、中退共、若年技術者在籍等 | | W2 | 営業年数 | 継続年数に応じて加点 | | W3 | 防災活動への貢献 | 防災協定締結 | | W4 | 法令遵守の状況 | 行政処分歴なし等 | | W5 | 建設業の経理に関する状況 | 建設業経理士の在籍数 | | W6 | 研究開発の状況 | 研究開発費の計上 | | W7 | 建設機械の保有状況 | 特定建設機械の保有・リース | | W8 | ISO等規格登録状況 | ISO9001・14001の認証取得 |
W評点は0.15というウエイトながら、比較的短期間に改善できる項目が多いという特徴がある。 加入証明書・資格証明書の提出で即時加点されるものも多く、 投資額に対するP点向上の効率が高い。
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入札参加資格の等級ランクとの関係
P点は各都道府県・市区町村が実施する入札参加資格審査において、等級格付けの主要な判定根拠となり、格付けランクによって入札参加できる案件の規模が決まる仕組みである。
格付けランクとP点の関係
格付けランクはA・B・C・Dなどの等級で区分されており、 発注者(自治体・国)によって基準点数が異なる。 概ねの目安は以下のとおりだが、自治体ごとに異なるため確認が必要である。
| ランク | P点目安(目安) | 工事規模目安 | |---|---|---| | A | 800点以上 | 3億5,000万円以上 | | B | 700〜800点 | 1億6,000万円〜3億5,000万円 | | C | 600〜700点 | 4,000万円〜1億6,000万円 | | D | 600点未満 | 4,000万円未満 |
ランクアップの経営的意味
ランクが1段階上がると、受注可能案件の上限が大幅に広がる。 CランクからBランクへの移行は、 最大受注単価が4倍近く拡大することを意味する場合がある。
売上規模・利益率・雇用規模の改善を中長期で設計するうえで、 経審点の向上は経営成長戦略の中核に位置づけるべき課題である。
格付け有効期間に注意する
格付けは一般に2年間固定となっている自治体が多い。 経審を受審してもすぐにランクが変わるわけではなく、 次回の入札参加資格申請時点でリセットされる仕組みである。
したがって、経審の点数改善は入札参加資格更新の1〜2年前から計画的に取り組む必要がある。 入札参加資格の取得方法について詳しくは別記事を参照されたい。
点数を上げる7つの具体的方法
P点向上の施策は短期・中期・長期に分類でき、経営資源の優先配分と実施タイミングを適切に設計することで、最小投資で最大の点数改善を実現できる。
以下に、実効性の高い7つの方法を優先度の高い順に整理する。
方法①:完成工事高の平均年数を毎年シミュレーションする
実施コスト:ゼロ/効果:即時
2年平均と3年平均を毎年比較計算し、高い方を選択する。 これは申請書類の記入方法を変えるだけで実現でき、費用は一切かからない。 大型工事の有無によって有利な年数が変わるため、毎年シミュレーションする習慣が重要だ。
方法②:建退共・中退共に加入する
実施コスト:月額掛金(従業員人数に応じる)/効果:加入翌年から反映
W1評点の「建設工事の担い手育成・確保に関する取組」として加点される。 中退共は金融機関で申込書を提出した日が契約成立日となるため、 決算日直前の加入でも経審で加点対象になる。 掛金は損金算入できるため、法人税の節税効果もある。
方法③:建設業経理士を育成・採用する
実施コスト:資格取得支援費用(5〜20万円/人)/効果:翌経審から反映
W5評点「建設業の経理に関する状況」として加点される。 1級建設業経理士は2点、2級は1点の加点が得られ、 人数に応じて累積する。 社内の経理担当者が資格を取得するだけで加点が積み上がるため、 組織強化と経審点向上を同時に達成できる施策として優先度が高い。
方法④:技術職員の1級資格取得を組織的に支援する
実施コスト:受験費用・学習支援(10〜30万円/人)/効果:資格取得翌年から反映
Z評点への最も直接的な投資である。 2級保有者が1級を取得すると1人あたり加点が2点→5点に跳ね上がる。 監理技術者講習まで受講させれば6点となる。
10名の技術者が2級から1級に移行した場合、 Z評点への貢献は30点増加する計算になる。 資格取得に要する投資額と比較すると、ROIは高い。
方法⑤:防災協定を地方自治体と締結する
実施コスト:実質ゼロ(協定締結費用なし)/効果:協定締結翌年から反映
W3評点「防災活動への貢献の状況」として加点される。 多くの自治体が建設業者との防災協定締結を推進しているため、 窓口への相談から締結まで比較的短期間で進めやすい。 費用がかからないにもかかわらず加点が得られる、効率の高い施策だ。
方法⑥:ISO認証を取得する
実施コスト:取得費用・維持費用(年間50〜200万円程度)/効果:認証取得翌年から反映
W8評点「国又は国際標準化機構が定めた規格による登録状況」として加点される。 ISO9001(品質管理)・ISO14001(環境管理)の認証取得が対象だ。 費用は相応にかかるが、経審点の向上に加え、 入札案件における技術評価でも有利に働くケースがある。 総合評価落札方式においても評価項目として扱われる自治体があるため、 一石二鳥の効果が期待できる。
方法⑦:財務体質の改善でY点を底上げする
実施コスト:経営改革に応じる/効果:決算翌年から反映
Y評点は財務指標8項目に基づいており、以下の対策が有効とされている。
- 借入金の計画的な返済による支払利息の圧縮
- 役員借入金の資本への振り替えによる自己資本比率の向上
- 不要な固定資産の売却による総資本の最適化
- 受取利息の確保(資金運用の見直し)
Y点単体のウエイトは20%だが、 財務改善はX2評点(自己資本額・平均利益額、ウエイト15%)にも同時に寄与するため、 合計35%への影響力を持つ。 決算期に向けた財務戦略と連動させた取り組みが重要だ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 経審は毎年受審する必要があるか?
経審の有効期間は審査基準日から1年7ヶ月である。 有効期間内に再受審しないと資格が失効するため、 公共工事への入札を継続する場合は実質的に毎年受審が必要となる。 申請の時期は決算日に合わせて設計するのが一般的だ。
Q2. 経審点を上げる施策は決算日前に実施すべきか?
W点に関係する加入・取得系の施策(中退共加入・資格取得等)は、 審査基準日(通常は決算日)時点の状況で評価される。 したがって、決算日前に加入・取得を完了させることが必要だ。 特に中退共は「申込書提出日が契約成立日」となるため、 決算日直前でも間に合わせることが可能である。
Q3. Z点を短期間で上げる現実的な方法はあるか?
最も即効性があるのは「監理技術者講習の受講」だ。 1級資格を持つ技術者が講習を受講するだけで、 1人あたりのZ点貢献が5点→6点に上がる。 講習は比較的受講しやすく、費用も数万円程度である。 即戦力として新たに1級技術者を中途採用することも、 コストはかかるが確実な方法だ。
Q4. P点が上がっても格付けランクに反映されないことがあるか?
格付けランクは入札参加資格の更新時点で見直される。 更新のタイミングは自治体によって異なり、 多くの場合2年に1回である。 経審点が改善しても、次回更新まではランクが変わらない場合があるため、 計画的な逆算スケジュールが重要だ。
Q5. Y点の計算に使う財務指標はどれか?
Y点は以下の8つの財務指標を組み合わせて算出される。
- 純支払利息比率
- 負債回転期間
- 売上高経常利益率
- 総資本売上総利益率
- 自己資本対固定資産比率
- 自己資本比率
- 営業キャッシュフロー
- 利益剰余金
各指標に点数が割り当てられ、 8指標の合計点が一定の換算式によりY評点に変換される。 財務改善の際は、影響の大きい指標から優先的に取り組む戦略が有効だ。
まとめ
経審P点は「X1(完成工事高)・X2(資本・利益)・Y(経営状況)・Z(技術力)・W(社会性等)」の5要素で構成される。 ウエイトの大きいX1とZへの投資が基本戦略であり、 Wは比較的低コストで短期間に改善できる点が特徴だ。
本記事で解説した7つの方法を優先度別に整理するとこうなる。
| 優先度 | 施策 | 対象評点 | コスト | 期待効果 | |---|---|---|---|---| | ★★★ | 平均年数の毎年シミュレーション | X1 | ゼロ | 即時 | | ★★★ | 建退共・中退共への加入 | W1 | 掛金 | 翌年 | | ★★★ | 建設業経理士の育成 | W5 | 低〜中 | 翌年 | | ★★ | 技術者の1級資格取得支援 | Z | 中 | 翌年以降 | | ★★ | 防災協定の締結 | W3 | ゼロ | 翌年 | | ★ | ISO認証の取得 | W8 | 高 | 翌年 | | ★ | 財務体質の改善 | Y・X2 | 経営努力 | 翌年以降 |
格付けランクアップは受注可能工事の規模を引き上げ、 会社の成長曲線を大きく変えうる経営施策である。 入札参加資格の更新スケジュールを起点に逆算し、 今期の経審申請に向けた具体的なアクションを設計されたい。
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