用語解説

技術提案・交渉方式とは?プロポーザルとの違いを徹底解説

技術提案・交渉方式(ECI方式含む)の仕組み・3タイプの違い・手続きの流れを実務者向けに解説。プロポーザル方式・総合評価落札方式との比較表付き。

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技術提案・交渉方式とは?プロポーザルとの違い

「公告を見たら『技術提案・交渉方式』と書いてあったが、プロポーザルとどう違うのか」 「ECI方式という言葉は聞いたことがあるが、手続きの流れが具体的にイメージできない」

こうした疑問を持つ営業担当者・技術者は多い。 技術提案・交渉方式は平成26年の品確法改正で正式に位置づけられた制度であるが、 プロポーザル方式や総合評価落札方式と混同されやすく、理解が定着しにくい。

本記事では、技術提案・交渉方式の定義・3つのタイプ・手続きの流れ・他方式との違いを、 国土交通省の最新ガイドライン(令和7年2月改正版)をもとに体系的に解説する。


1. 技術提案・交渉方式とは?基本の定義

技術提案・交渉方式とは、工事の仕様を事前に確定できない場合に、複数の施工者から技術提案を募り、最も優れた提案者を選定したうえで仕様・価格を交渉によって確定し、契約に至る入札方式である。

従来の入札制度では、発注者が詳細な設計図書・仕様書を作成したうえで競争入札を行う流れが基本だった。 しかし複雑な地盤条件・難易度の高い施工環境・大規模な災害復旧工事などでは、 事前に最適な仕様を確定することが困難なケースが存在する。

こうした案件に対応するため、平成26年6月施行の「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」改正で 技術提案・交渉方式が法制上に明確に位置づけられた。

制度の根拠

品確法第18条は、発注者が工事の性格等に応じて「技術提案の審査及び価格等の交渉により仕様を確定し、 予定価格を定めることができる」旨を規定している。 国土交通省は平成27年6月に運用ガイドラインを策定し、令和7年2月に最新版へ改正している。


2. 技術提案・交渉方式の3つのタイプ

技術提案・交渉方式は、設計と施工の関係により「設計・施工一括タイプ」「技術協力・施工タイプ(ECI)」「設計交渉・施工タイプ」の3種類に分類される。

それぞれのタイプは適用条件と手続きが異なるため、公告を確認する際は必ずタイプを特定する必要がある。

タイプ1:設計・施工一括タイプ

設計と施工を一括して発注するタイプである。 公示段階で仕様の前提となる条件がある程度確定しており、 施工者が設計から一体的に担うことで効率化・品質向上が期待できる工事に適用される。

| 項目 | 内容 | |---|---| | 適用条件 | 設計・施工を一括契約できる程度に条件が確定している工事 | | 契約形態 | 設計・施工の一括契約 | | 代表的な工事 | 大型橋梁・トンネル・特殊構造物など |

タイプ2:技術協力・施工タイプ(ECI方式)

ECI(Early Contractor Involvement:施工者の早期関与)と呼ばれるタイプである。 発注者が別途実施する設計業務に、選定された施工者が技術協力業務として関与しながら 仕様・価格を交渉し、交渉成立後に施工契約を締結する。

| 項目 | 内容 | |---|---| | 適用条件 | 設計段階で仕様が不確定であり、施工者の技術力を設計に反映させることが有効な工事 | | 契約形態 | ①技術協力業務契約 → 交渉 → ②施工契約(2段階) | | 代表的な工事 | 施工環境が複雑なトンネル工事・大規模補修工事など |

タイプ3:設計交渉・施工タイプ

発注者が仕様の前提となる条件を明確にできない段階から施工者を選定し、 設計業務と並行しながら交渉を進めるタイプである。 ECI方式よりもさらに早い段階から施工者が関与する点が特徴である。

| 項目 | 内容 | |---|---| | 適用条件 | 事業の上流段階(計画・調査・予備設計等)から仕様確定が困難な工事 | | 契約形態 | 設計業務への関与 → 交渉 → 施工契約 | | 代表的な工事 | 地質・環境条件が不確定な大規模工事・特殊工法が必要な工事 |

3タイプの比較

| タイプ | 施工者の関与時期 | 設計の主体 | 仕様確定の段階 | |---|---|---|---| | 設計・施工一括 | 公示段階 | 施工者 | 公示時点でほぼ確定 | | 技術協力・施工(ECI) | 設計段階 | 発注者+施工者が協力 | 技術協力業務中に確定 | | 設計交渉・施工 | 上流段階(計画・調査) | 発注者中心(施工者が関与) | 設計と並行して確定 |


3. 手続きの流れ

技術提案・交渉方式の手続きは「公示→参加表明→技術提案書提出→審査・ヒアリング→優先交渉権者選定→交渉→契約」の順に進む。

ここではECI方式(技術協力・施工タイプ)を例に、主要なステップを解説する。

ステップ1:公示・競争参加資格の確認

発注者は工事の概要・評価項目・参加資格要件を公告する。 受注者側はまず競争参加資格要件(施工実績・技術者の資格・経営状況等)を満たすか確認する。

要件を満たす場合、「競争参加確認申請書」または「参加表明書」を提出する。

ステップ2:技術提案書の作成・提出

参加資格を認められた事業者に対し、発注者から技術提案書の提出が要請される。 技術提案書には以下の内容を記載する。

  • 工法・施工計画の提案
  • 品質・安全・環境への対応方針
  • 施工実績・配置予定技術者の経歴
  • 工事費内訳書(概算)

技術提案書の具体的な書き方については、技術提案書の書き方を参照されたい。

ステップ3:技術評価・ヒアリング

提出された技術提案書を発注者が審査し、必要に応じてヒアリングを実施する。 審査では各提案を評価基準に基づき採点し、技術評価点の高い順に順位付けする。

なお、評価基準値(最低ライン)を満たさない提案は、以降の手続きへ進めない。

ステップ4:優先交渉権者の選定

技術評価点の最上位の事業者が「優先交渉権者」に選定される。 選定結果は原則として公表される。

ステップ5:技術協力業務契約と設計への関与(ECI方式の場合)

優先交渉権者と「技術協力業務契約」を締結する。 施工者は発注者が実施する設計業務に関与し、施工に必要な技術的知見を反映させる。 この段階で設計内容・工期・工事費の詳細が精査される。

ステップ6:価格・仕様の交渉

技術協力業務の成果をもとに、発注者と優先交渉権者が価格・仕様について交渉する。 発注者は積算・設計の専門家を活用しながら、価格の妥当性を検証する。

交渉が成立した場合、施工契約を締結する。 交渉が不調に終わった場合は、第2順位の事業者(次順位交渉権者)と交渉を行う。

ステップ7:施工契約の締結

価格・仕様が合意に達した段階で施工契約を締結し、着工へ移行する。


4. プロポーザル方式・総合評価落札方式との違い

技術提案・交渉方式はプロポーザル方式と類似しているが、「価格を含めた仕様を交渉で確定する」点で本質的に異なり、事前に価格競争がある総合評価落札方式とも明確に区別される。

3方式の比較表

| 比較項目 | 技術提案・交渉方式 | プロポーザル方式 | 総合評価落札方式 | |---|---|---|---| | 主な根拠法 | 品確法第18条 | 会計法・地方自治法 | 品確法第16条 | | 主な対象 | 工事(建設工事) | 委託業務(設計・調査等) | 工事・委託業務 | | 仕様の確定タイミング | 交渉後に確定 | 選定後に協議 | 入札前に確定 | | 価格の決め方 | 交渉による | 選定後に協議 | 競争入札 | | 落札者の決定方法 | 技術評価点1位→交渉→合意 | 技術評価点1位→交渉→合意 | 価格+技術評価の総合点最高者 | | 価格競争の有無 | なし(交渉) | なし(交渉) | あり(入札) | | 主な使用シーン | 仕様確定困難な工事 | 技術力・提案力重視の業務 | 標準的な工事・業務 |

プロポーザル方式との最大の違い

プロポーザル方式は主に建設コンサルタント業務(設計・調査・測量等)に適用される方式で、 「誰に頼むか」を技術力・提案力で決定し、その後の契約内容は別途協議する仕組みである。

一方、技術提案・交渉方式は主に建設工事に適用され、 「仕様そのものが不確定な工事」において施工者の技術力を仕様の確定プロセスに組み込む点が特徴である。

プロポーザル方式の詳細については、プロポーザル方式ガイドを参照されたい。 また、仕様が確定した工事での評価方法については、総合評価落札方式とはを参照されたい。


5. 適用される工事の要件

技術提案・交渉方式が適用されるのは「発注者が最適な仕様を設定できない工事」であり、適用判断は発注者が事業の上流段階から行うことが推奨されている。

国土交通省の運用ガイドライン(令和7年2月改正)では、以下のような工事が典型的な適用対象として示されている。

適用が想定される工事の特徴

| 特徴 | 具体例 | |---|---| | 地盤・地質条件が不確定 | 軟弱地盤・断層が存在するトンネル工事 | | 特殊な工法が必要 | 近接施工・水中施工・特殊橋梁工事 | | 施工環境が複雑 | 市街地での大規模掘削・鉄道隣接工事 | | 施工者の技術力が仕様に影響 | 新技術・新工法を用いる工事 | | 入札不調が懸念される | 過去に不調・不落となった大規模工事 | | 災害復旧で早期対応が必要 | 大規模土砂崩れ・橋梁崩落後の緊急復旧工事 |

令和7年2月改正では、計画・調査・予備設計等の事業上流段階から適用を検討することが明記された。 また、小規模な修繕工事での効率的な手続き適用も追加されており、適用範囲が拡大している。


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6. メリットと留意点

技術提案・交渉方式は発注者・受注者の双方にメリットをもたらす一方、透明性・公平性の確保に関する課題も存在する。

発注者側のメリット

  • 事前に確定できない仕様を施工者の技術力を活かして決定できる
  • 入札不調・不落のリスクを軽減できる
  • 施工者の経験・知見を設計段階から反映できるため、手戻りを防げる
  • 最適な工法・工期・コストの組み合わせを実現しやすい

受注者(建設会社)側のメリット

  • 自社の技術力・提案力を正当に評価してもらえる機会となる
  • 設計段階から関与するため、施工リスクを事前に把握・軽減できる
  • 競合が少ない(参加要件・提案負荷の高さから参加者が絞られやすい)
  • 価格競争ではなく交渉によるため、適正な利益を確保しやすい

留意点・課題

| 課題 | 内容 | |---|---| | 透明性・公平性の確保 | 価格競争がないため、交渉プロセスの透明性確保が必要 | | 発注者の体制 | 仕様の評価・価格の妥当性検証には専門的な審査能力が必要 | | 受注者の提案負荷 | 技術提案書の作成に相当なコストがかかる | | 交渉不調のリスク | 優先交渉権者との交渉が不成立となる可能性がある | | 透明性確認 | 評価基準・選定結果・交渉結果の公表が求められる |

令和7年2月のガイドライン改正では、競争参加者の受注前の負荷が過大にならないよう 技術提案テーマの設定方法が改善されており、受注者側の負担軽減も図られている。


7. 2025年度以降の動向と注意点

令和6年の品確法等改正(担い手3法)により、技術提案・交渉方式を含む入札制度の運用が2025〜2026年度にかけて順次見直されている。

主な改正ポイント

令和6年6月に公布された「第三次・担い手3法(品確法・建設業法・入契法の一体的改正)」では、 以下の方向性が示されている。

  • 新技術・ICT活用の適切な評価と予定価格への反映の義務化
  • 脱炭素化に向けた工法提案の評価促進
  • 受注者による原価割れ契約・工期ダンピングの禁止(2025年12月までに施行予定)
  • 標準労務費をベースとした見積もり・契約規制の導入

実務上の注意点

技術提案・交渉方式の公告を確認する際は、以下の点に留意する必要がある。

  1. タイプの確認:3タイプのうちどれに該当するかを必ず確認する
  2. 評価基準値:最低基準を下回ると失格となるため、評価基準書を精読する
  3. 提案テーマの設定:令和7年2月改正以降、テーマが絞り込まれた案件が増加する傾向にある
  4. 交渉不調時の対応:万一、優先交渉権者の立場を失った場合の社内連絡体制を事前に整備する

2025年度の入札制度全般の変更点については、2025年度入札制度改正で詳しく解説している。


まとめ

本記事で解説した技術提案・交渉方式の要点を整理する。

  • 技術提案・交渉方式は、仕様確定が困難な工事で施工者の技術力を活かして仕様・価格を交渉で決める方式である
  • 3つのタイプ(設計・施工一括/ECI方式/設計交渉・施工)があり、施工者の関与タイミングが異なる
  • プロポーザル方式は主に委託業務に適用され、技術提案・交渉方式は建設工事に特化している
  • 総合評価落札方式と異なり、価格競争がなく交渉によって価格を決定する
  • 令和7年2月の改正ガイドラインにより、事業上流段階からの適用拡大受注者の負担軽減が推進されている
  • 受注者側にとっては技術力・提案力が直接評価され、適正利益を確保しやすい有利な方式である

技術提案・交渉方式の案件は、技術提案書の質が直接受注に結びつく。 提案テーマの設定・施工実績の整理・配置技術者の選定を早期から着手することが受注への近道である。


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| サービス・ツール | 特徴 | 主な活用シーン | |---|---|---| | 入札情報サービス(NJSS等) | 技術提案・交渉方式の公告を横断検索 | 案件の早期発見・参加判断 | | 積算システム | 工事費内訳書の作成支援 | 技術提案段階の概算積算 | | 技術提案書作成支援ツール | テンプレート・過去事例の参照 | 提案書の品質向上・作業短縮 | | 入札結果分析ツール | 競合他社の技術評価点・落札状況の把握 | 戦略立案・提案精度の改善 | | AI文章支援ツール | 提案書の文章表現・構成の最適化 | 提案書作成の効率化 |

技術提案・交渉方式を含む入札業務の全体的な効率化については、 入札支援サービスの活用ガイドで詳しく解説している。


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記事情報

  • 記事番号:123
  • 公開日:2026-03-18
  • キーワード:技術提案交渉方式とは
  • 参考資料:国土交通省「国土交通省直轄工事における技術提案・交渉方式の運用ガイドライン」(令和7年2月改正)/品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)
  • UTMパラメータ:utm_campaign=123

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