2025年度の入札制度改正まとめ|技術提案の加算点拡大と実務への影響
2025年度(令和7年度)の入札制度改正を解説。技術提案評価型SI型の試行導入、加算点の拡大方針、賃上げ加点の継続など、建設業者が知るべき制度変更の全体像と対応策を示す。
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2025年度の入札制度改正まとめ|技術提案の加算点拡大と実務への影響
「公告の評価基準を見たら、これまでと点数の配分が変わっていた。」 「SI型という新しい入札方式の案内が来たが、何をどう準備すればよいかわからない。」
2025年度(令和7年度)から国土交通省は総合評価落札方式の大幅な見直しを進めている。 技術提案の加算点拡大、新評価型「SI型」の試行導入、賃上げ加点の継続など、 建設業者の受注戦略に直結する変更が複数走っている。
本記事では、2025年度入札制度改正の全体像を整理したうえで、 技術提案の加算点拡大の詳細と実務での対応策を体系的に解説する。
1. 2025年度の入札制度改正の全体像
2025年度(令和7年度)の入札制度改正は、技術提案の差別化強化・仕様変更提案型の試行導入・賃上げ加点の継続という3本柱で構成されており、技術力の高い企業が評価値で有利になる方向への転換が明確に示されている。
国土交通省は2024年6月、総合評価落札方式の抜本見直し方針を公表した。 背景にあるのは、制度本来の目的である「技術力の競争」が実質的に機能していないという問題認識である。
改正が生まれた背景
現行の技術提案評価型では、入札ごとに発注者がテーマを設定する。 しかし過去に実績のあるテーマが繰り返し設定されるため、参加者全員が類似した提案を提出しやすい。 結果として技術評価点に大きな差がつかず、最終的に入札価格の差だけが勝負を分けるケースが増えていた。
また、入札価格が調査基準価格付近に集中する傾向も指摘されている。 価格でも技術でも差がつかないとすれば、制度の意義が薄れる。 こうした問題を受け、国は「技術力が評価値に反映される仕組み」の再構築に動いた。
2025年度改正の3本柱
| 改正内容 | 概要 | 対象 | |----------|------|------| | 加算点の拡大 | 技術評価における加算点の上限を引き上げ、点差が広がるよう試行 | 直轄工事全般 | | SI型の試行導入 | 仕様変更を含む技術向上提案を受け付ける新評価型を試行 | 直轄土木工事(試行対象案件) | | 賃上げ加点の継続 | 賃上げ実施企業への加点措置を2025年度も継続 | 直轄全工事・業務 |
加えて、品確法等の一体改正(2024年6月公布)に基づく発注者側の責務強化や、 地域建設業の維持・地域貢献の評価強化も並行して進んでいる。
地方整備局ごとの実施方針
制度の基本方針は国土交通省本省が策定し、各地方整備局が実施方針として具体化する体制をとっている。 九州地方整備局・関東地方整備局はそれぞれ令和7年度版の実施方針を公表しており、 細部の運用は整備局ごとに差異が生じる場合がある。
入札参加前に、対象案件を管轄する整備局の最新ガイドラインを必ず確認することが前提となる。
なお、総合評価落札方式の基本的な仕組みや評価値の計算方法については総合評価落札方式とはに詳細を記載している。
2. 技術提案の加算点拡大の詳細
2025年度の加算点拡大は、点差が出にくかった技術評価型の加算点の上限を引き上げる試行であり、あわせて新評価型「SI型」の導入によって仕様変更を含む技術提案が初めて評価対象になった。
現行の加算点の構造
まず現行の加算点の仕組みを整理する。 総合評価落札方式では、技術評価点は「標準点」と「加算点」で構成される。
技術評価点 = 標準点(100点) + 加算点
加算点は入札者の提案内容や企業実績によって上乗せされる点数であり、 評価値の差を生む主要因である。
現行ガイドライン(2023年3月改訂版)における加算点の目安は以下の通りだ。
| 評価類型 | 加算点の目安 | 主な評価項目 | |----------|------------|-------------| | 施工能力評価型Ⅰ型 | 20〜40点程度 | 企業実績・技術者経歴・施工計画 | | 施工能力評価型Ⅱ型 | 10〜20点程度 | 企業実績・技術者経歴 | | 技術提案評価型A型 | 30〜70点程度 | 技術提案の内容・企業実績・技術者経歴 | | 技術提案評価型S型 | 40〜60点程度 | 高度な技術提案・企業の技術開発力 |
加算点拡大の試行内容
2025年度試行では、技術提案評価型における加算点の上限値を引き上げる方向で実施される。 具体的な上限値は案件ごとに設定されるが、現行水準より点差が広がる設計となる。
国土交通省は「技術評価点に差がつきにくい」という問題の解決手段として、 配点構造自体の見直しに踏み込んだ形である。
加算点の幅が広がれば、以下のような変化が生じる。
- 優れた技術提案が評価値に反映されやすくなる
- 高価格でも高い技術力があれば落札できる可能性が高まる
- 類似提案だけでは点差を埋めにくくなる
技術提案書の質が、これまで以上に受注の直接的な決め手になるということだ。
新評価型「SI型」の導入
加算点拡大と並ぶ最大の変更が、技術提案評価型「SI型(エスイチ型)」の試行導入である。
SI型は従来のS型の派生タイプとして新設された評価方式だ。 S型との最大の違いは「仕様変更を含む技術向上提案を受け付ける」点にある。
| 比較項目 | 従来のS型 | 新設のSI型 | |----------|-----------|-----------| | 提案の範囲 | 発注者が示した仕様の範囲内 | 仕様変更(軽微な変更)を含む提案が可能 | | 提案コストの扱い | 入札価格に含める | 予定価格の5%を上限に契約変更で計上 | | 評価テーマ | 発注者が一方的に設定 | 仕様変更が品質向上等につながるか評価 | | 目的 | 技術力の競争 | 品質・安全性・維持管理性の向上 |
SI型で想定される「技術向上提案」のテーマ例は以下の通りである。
- 工期リスク低減につながる施工性の高い工法への変更
- 交通渋滞・事故防止や作業員の安全性向上策
- 維持管理性の高い工法・材料の採用
- 環境負荷の低減につながる仕様変更
提案採用時の費用は予定価格の5%を上限とする契約変更で対応するため、 入札価格そのものへの影響は限定的である。
この仕組みにより、発注者の想定を超える提案が現実的に評価対象となった。 ICT施工やBIM/CIMを活用した工法変更提案も、SI型のテーマとして適合しやすい。
ICT施工を活用した技術提案の具体的な書き方はICT施工の技術提案に詳しい。
賃上げ加点の2025年度継続
賃上げを実施する企業への加点措置は2022年4月から継続されており、 2025年度も同じ要件・加点幅で継続実施されることが決定している。
加点の要件は以下の通りである。
| 企業区分 | 賃上げ要件 | |----------|-----------| | 大企業 | 従業員1人当たりの平均給与額等を前年度比3%以上引き上げ | | 中小企業 | 給与総額等を前年度比1.5%以上引き上げ |
直轄工事の入札参加企業のうち7割超が賃上げ表明をしているとされており、 賃上げ加点は事実上「参加条件に近い水準」になりつつある。 未対応の企業は加点の機会を失うだけでなく、競合他社との評価差を広げる。 見直しが間に合わない場合の機会損失は大きい。
NETIS登録技術の活用による加点と組み合わせた戦略についてはNETIS活用による技術提案を参照されたい。
3. 建設業者が取るべき対応策とは?
加算点拡大とSI型の導入は「技術力の高い企業が報われる仕組みへの転換」を意味しており、建設業者は技術提案書の質の向上・自社技術の棚卸し・社内体制の整備という3点で早期に対応することが求められる。
対応策① 技術提案書の質の向上
加算点の幅が広がれば、提案書の内容の差がそのまま評価値の差に直結する。 「過去の提案書の流用」「一般論で終わる提案」が通用しなくなる段階に入ったと考えるべきだ。
提案書の質を高めるために取り組むべき具体策は以下の通りである。
-
工事特有のリスクと解決策を明記する 発注者が設定したテーマに対し、当該工事固有の地形・土質・交通環境を踏まえる。 自社が採用する工法・材料・管理手順を具体的に記述することが求められる。
-
数値で根拠を示す 「品質が向上する」だけでは評価員は納得しない。 「○○工法により出来形精度がXX%向上する」という定量的根拠が必要だ。 施工実績データ・NETIS評価データ・学術論文等が根拠資料として活用できる。
-
SI型提案テーマに対応できる技術の準備 仕様変更提案が可能になった以上、自社が保有する改善工法を事前に整理する。 「コスト・工期・品質の改善につながる工法」のリスト化が準備の核心だ。 提案テーマが公告されてから考え始めては遅い。
技術提案書の書き方の詳細については技術提案書の書き方も合わせて確認されたい。
対応策② 自社技術の棚卸しとNETIS活用
SI型では「品質・安全・維持管理性の向上につながる技術」が評価対象となる。 自社が保有する特許工法・独自施工手順・NETIS登録技術の一覧化が準備の第一歩だ。
NETIS技術は加点の根拠として有効であり、整備局の評価員も登録内容を参照する。 VE・VR技術は効果が確認されているため提案書への組み込み優先度が高い。
自社技術の棚卸しを行う際の確認リストは以下の通りだ。
- NETIS登録技術の有無と評価ステータス(A/VR/VE)
- 独自工法・施工手順に関する社内文書・施工実績データ
- ICT施工の実施実績(ドローン測量・マシンコントロール・3D出来形管理等)
- BIM/CIM活用の実績と対応可能な業務範囲
対応策③ 賃上げ計画の早期確定
賃上げ加点の要件は年度初めの表明段階で確認される。 前年度の給与総額・平均給与額のデータを確認し、要件を満たすかを早期に把握する。
賃上げ加点を確実に取得するためのステップは以下の通りだ。
- 前年度の給与実績データの整理(大企業:1人当たり平均給与、中小企業:給与総額)
- 賃上げ率が要件(大企業3%・中小企業1.5%)を満たすかの確認
- 賃上げ計画の決定と証明書類の準備
対応策④ 公告の変更点を逃さない体制整備
2025年度以降の公告では、評価基準書の記載内容が変わる案件が増える。 「いつもと同じ」という前提で準備を始めると、加算点の設定や提案テーマが変わっていたことに気づくのが遅れる。
具体的には以下の確認を公告取得時に徹底する必要がある。
- 今回の案件は「SI型」か否か
- 加算点の上限は前年度と比べて変化があるか
- 技術向上提案のテーマ設定の内容
- 賃上げ加点の申請が必要かどうか
4. 入札支援AIで技術提案書を効率化する
技術提案の加算点が拡大する2025年度以降、提案書の品質が受注の分岐点になる。 しかし「提案書を書く時間がない」「何を書けばよいか毎回悩む」という声は現場に多い。
入札支援AIは、過去の施工実績と公告条件をもとに技術提案書のドラフトを自動生成する。 自社の文体・強みを学習して「御社らしい」提案書を短時間で仕上げられるため、 担当者の作業負荷を大幅に削減しながら提案の質を維持できる。
- SI型の技術向上提案テーマへの対応文案を生成
- NETIS登録技術の活用提案を自動組み込み
- 数値根拠の記述支援と過去実績との整合性チェック
- 賃上げ加点申請書類の作成支援
加算点拡大で差がつく時代に、提案書の「量産」ではなく「質の向上」を支援するツールとして活用されている。
5. 技術力で差をつけるチャンスが拡大する背景
2025年度の制度改正は単なる配点変更ではなく、公共工事の発注思想が「価格競争」から「技術力競争」へ本格的に転換する流れの一部であり、その背景には労働力不足・建設コストの上昇・インフラの老朽化という構造問題がある。
技術競争を強化せざるを得ない理由
日本の建設業が置かれている環境は、2025年時点で以下の問題を同時に抱えている。
1. 労働力不足と担い手問題
建設業の就業者数は2025年時点で約480万人とされる。 ピーク時(1997年)の685万人から大幅に減少している。 2024年4月から適用された時間外労働の上限規制(建設業の猶予期間終了)により、 少ない人員で高品質な工事を完了させる「施工技術の高度化」が不可欠となっている。
この課題に対応できる技術力・施工効率化手法を持つ企業を評価することは、 発注者にとっても合理的な選択である。
2. 建設コストの継続的上昇
資材費・労務費の上昇が続き、公共工事設計労務単価は2013年から13年連続で引き上げられている。 発注者は限られた予算の中で最大の品質を確保するために、 単純な低価格提案より「コストに見合う品質を保証できる企業」を求めている。
SI型の試行もこの文脈で捉えるべきである。 「予定価格の5%以内で仕様変更してでも品質を上げる価値がある技術提案」を 評価する仕組みは、発注者が品質に対してコストを払う意思を示したものだ。
3. インフラ老朽化と維持管理の増加
高度経済成長期に整備されたインフラが一斉に老朽化する時代を迎え、 維持管理・補修工事の割合が増加している。 こうした工事では複雑な施工技術と維持管理性を考慮した工法選択が求められる。 評価項目に「維持管理性の向上」が明示されたSI型は、この流れに沿った制度設計だ。
中堅・中小建設業者にとってのチャンス
加算点が拡大すると、「大手が有利」と感じる担当者もいるかもしれない。 しかし、この改正は実績件数の多い大手が単純に有利になる変更ではない。
加算点の拡大で重視されるのは「この工事に対して何ができるか」という個別の提案内容である。 地域の地形・地質・気象条件を熟知した地元中堅業者の提案は、 発注者の評価員が工事特有のリスクとして認識している課題に直結することが多い。
また、SI型の技術向上提案は「1テーマ」での設定が想定されており、 大規模な技術開発投資を持つ大手でなければ対応できない内容ではない。 現場改善の積み重ねや、NETIS技術の活用実績が直接評価に結びつく構造といえる。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. SI型の試行対象になる工事はどう見分けるか?
入札公告の「入札説明書」または「評価基準書」に評価方式として「技術提案評価型SI型」と明記される。 2025年度は試行段階であるため、すべての工事が対象になるわけではない。 まず公告文書で評価類型を確認することが最初のステップだ。 管轄の地方整備局の実施方針にも試行対象案件の基準が示されているため、 あわせて参照することを推奨する。
Q2. SI型の技術向上提案を採用されなかった場合、評価はどうなるか?
SI型では、提案が発注者に採用されなかった場合でも、 「提案の内容そのもの」が技術評価点として採点される仕組みとなっている。 採用の可否は契約変更の要否に関わるが、提案書の評価は入札時点で完結する。 ただし採点基準の詳細は案件ごとの評価基準書に依存するため、 公告時に評価基準書を精読することが重要である。
Q3. 賃上げ加点の申請はどのタイミングで行うか?
賃上げ加点の申請は、入札参加申請書(競争参加資格確認申請書)の提出時に、 賃上げを表明する書類(誓約書等)を添付する形で行う。 前年度の賃金実績が確定していない時期に提出する場合もあるため、 「前年度比で定められた率以上の賃上げを実施する予定」を表明する形が基本となる。 実施しなかった場合には次年度以降の入札に影響が生じる可能性があるため、 表明後の実施状況の管理も重要である。
Q4. 加算点が拡大されると、低価格での入札が不利になるか?
加算点の拡大は、技術評価点の差が評価値に反映されやすくなる変化である。 評価値 = 技術評価点 ÷ 入札価格(除算方式)の計算構造は変わらない。 低価格が不利になるわけではなく、技術評価点が低ければ価格での挽回が難しくなるというのが正確な理解だ。 加算点が大きい工事では、適切な価格水準で技術力を前面に出す戦略が有効になる。
Q5. 地方自治体発注の工事も同じ改正が適用されるか?
2025年度の試行改正は国土交通省直轄工事が対象である。 都道府県・市区町村発注の工事は、国の改正を参考に順次見直しを進める自治体が増えている。 適用時期・内容は自治体ごとに異なる。 特に都道府県や政令市では早期に準用する傾向があるため、 入札説明書・評価基準書の変更点を都度確認することが求められる。
7. まとめ
2025年度の入札制度改正は、以下の3点に集約される。
-
加算点の拡大:技術評価点の差が評価値に反映されやすくなる試行が始まった。 類似提案の使い回しが通用しにくくなり、工事特有の具体的提案が求められる。
-
SI型の試行導入:仕様変更を含む技術向上提案が初めて評価対象になった。 予定価格の5%を上限とする契約変更のもとで、改善提案が受け付けられる。
-
賃上げ加点の継続:大企業3%・中小企業1.5%の要件は変わらず継続される。 参加企業の7割超が表明しており、未対応は相対的な不利を招く。
建設業者が取るべき対応は明確だ。 技術提案書の質を高める・自社技術を棚卸しする・賃上げ計画を早期に確定する。 この3点への対応が2025年度以降の受注戦略の柱となる。 制度が技術力を重視する方向に動いている今こそ、 日々の現場で蓄積してきた技術力を提案書に正しく落とし込む力が問われている。
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記事情報
- 記事番号:024
- 公開日:2026-03-17
- 対象ペルソナ:P1(入札担当者・現場管理者)、P2(経営層・営業責任者)
- 主要キーワード:入札制度 改正 2025 / 総合評価 加算点 拡大
- 参考資料:国土交通省「総合評価落札方式の運用ガイドライン(2023年3月改訂)」、国土交通省「直轄工事における総合評価落札方式技術提案評価型SI型の試行」、各地方整備局令和7年度実施方針
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